【設計図の書き方】DIY設計の基本が身に付く!手書きで図面を描いてみよう
現在、DIYやハンドメイド作品作りで設計図を描きたい!という方が増えています。
なぜなら設計図を作成することで、想像したデザインやカラーによるイメージの違いが作成前にわかり材料の無駄なくきれいな仕上がりになるため、非常に重要な役割があるからです。
今回、初心者・未経験の方にも簡単に作成できるように、 三角法や投影法など設計図の基本をわかりやすく解説します。 また、実際に「棚」の設計図を作成してみましょう!
目次
1. 設計図の基本
自分の考えを他の方に伝えるには文章や言葉を使いますが、物の形や大きさを表すには図面を用いると、
正確でわかりやすく伝えることが出来ます。
図面を作成することを「製図」といいますが製図には規格があり、それに基づいて図面を正確に書かなければなりません。
製図の規格や図面のさまざまな役目と種類について分かりやすく解説します!
1-1. 図面の特性と役割
図面の特性は、全体と詳細、直感的と説明的に大きく分かれます。説明やプロジェクトを円滑に進めるために欠かせないアイテムの1つが図面です。
- パースとは、実際にその場所にいるかのような視点でイメージできる図面。スケール感を把握しやすいメリットがある。
- 投影図とは、全体を一度に見せることができ、平面図では分からない情報も伝えることができる。詳しくは▼投影法と三角法で解説します。
- 平面図とは、建築だと間取りなどを伝えるのに最適な図面で、初期段階のプレゼンなどでは必須です。
図面の役割は、設計者の意図を製作者(図面のものを製作又は生産する人)に正確に伝えて、正しく製作・生産・建築してもらう役割があります。
正確な図面でない場合、棚の中段板の高さ位置や横サイズが異なり棚幅に収まらないなどの問題が生じてしまいます。 正確で分かりやすい設計図面を作成することで、失敗のないイメージ作品を完成することができます。
では正確な図面とは何でしょう?
それは、製品の形状・寸法や材料だけでなく、仕上げの程度や工程など製作に必要な情報が記入されている図面のことで、 製作者の誰がみてもわかる図面のことです。
製図には約束事があり、それを「規格」といいます。
機械・建築・電気などに共通な基本および一般事項に関する規格は「製図総則」、
それぞれの分野ごとの特殊な規格があります。
1-2. 図面の種類と規格
分野ごとに図面の種類や製図の規格は異なります。
対象物によって分野ごとに図面の種類は異なりますので、おもな図面の種類を抜粋して説明します。
分類 | 図面の種類 | 内容 |
---|---|---|
内容による分類 | 全体図・組立図 | 建物や部品の相対的な位置情報、完成した(組立られた)形状を示す図面 |
部品図 | これ以上分解できない単一部品の定義および必要情報を示す図面 | |
配置図 | 地域内の建物の位置や機械などの据え付け位置の情報を示す図面 | |
用途別による分類 | 計画図 | 設計の意図、計画を表現した図面 |
見積図 | 依頼者に見積内容を示すための図面 | |
試作図 | 製品や部品などの試作を目的とした図面 | |
製作図 | 製造に必要な情報を全て示す図面 | |
表現形式による分類 | 展開図 | 対象物を構成する面を展開した図面 |
詳細図 | 対象物の詳細な情報を示す図面 | |
計装図 | 測定装置や制御装置などを工業装置や機械装置に装備・接続した状態を示す図面 | |
配線図 | 装置またはその構成部品における配線の状態を示す図面 | |
配管図 | 構造物や装置における管の接続・配置の状態を示す図面 |
先程も説明しましたが、描く対象物によって規格は異なります。
今回は、主に機械製図に関連する規格のリンク先を紹介します。参照にしてみて下さい。
規格名称 | 規格番号およびリンク先 |
---|---|
製図用語 | JIS Z 8114 |
製図総則 | JIS Z 8310 |
製図(文字) | JIS Z 8313 |
製図(尺度) | JIS Z 8314 |
製図(投影法) | JIS Z 8315 |
1-3. 製図用具
製図には、シャープペンシル・消しゴム・定規(T定規・三角定規)・三角スケール・コンパス・テンプレート・消し板(字消し板)・製図版・製図用紙・製図用ブラシ・電卓などがあります。
引用元:Rakuten
製図用紙は、A列サイズのケント紙・トレース紙・方眼紙などが使われ、長辺を横方向に置き製図します。
A4サイズに限っては長辺を縦方向においてもOKです。
図面には、太さ0.5mm以上の輪郭線を設けます。
シャープペンの太さは、作図する線の太さがいくつかありますので何種類か用意しておくと便利です (細線用の太さで何重か線を引き太線にする方法もあります)。
製図器には、円を描いたり寸法をとったりするのに便利なコンパス、図面に描いた狭い部分を消す際に使用する消し板(字消し板)、円や円弧また隅に丸みをつけるのに便利なテンプレートなどがあります。
2. 設計図の書き方の基本
設計図を分かりやすく表現するために、線の種類や形と太さ、規格に規定された文字と数字、三角法などの表現方法などいくつかの基本があります。
手描きの図面では個人差がでて、読み間違いを起こしてしまう可能性がありますので、 正しい図面を描くために基本を学んでおきましょう!
2-1. 寸法数字と文字
図面には、図形のほかに寸法や加工する上での指示などで文字や数字・記号を使用します。
文字や数字などは、形や大きさをそろえて丁寧に描くようにしましょう。
製図に使用される漢字・かな・ローマ字・数字は、分野によっては大きさや書体など規定されています。
例えば機械製図において、ローマ字・数字および記号の書体は「A形書体」「B形書体」どちらかの直立体または斜体を使用し、
同一図面内では混同しないなどがあります。
斜体は垂直に対して右方向に15°傾け、また文章は「横書き」で表記します。
引用元:武蔵野美術大学HP
文字の大きさ(高さ)は、2.5mm、3.5mm、5mm、7mm、10mm(漢字のみ3.5mm以上)で描きます。
2-2. 尺度
尺度とは、対象物を描くとき図面に描く図形の大きさと実際のモノのサイズとの割合を示します。
例えば、A3サイズで車の全体図を作成する場合、車が大きくてA3サイズに入りきらないですよね?その場合は縮尺を使用し製図します。
図面は原則として「現尺」「縮尺」「倍尺」が使用されます。
・現尺とは原寸ともいい、実際のサイズで表しています。
・縮尺とは、実際のサイズが比較的大きい場合に使用します。
・倍尺とは、実際のサイズが比較的小さい場合に使用します。
JISで定められている尺度 | |
---|---|
尺度の種類 | 値(図面内のサイズ:実際のサイズ) |
縮尺 | 1:2 1:5 1:10 1:20 1:50 1:100 1:200 1:500 1:1000 1:2000 1:5000 1:10000 |
現尺 | 1:1 |
倍尺 | 2:1 5:1 10:1 20:1 50:1 |
尺度は図面内に表記し、同一図面内に異なった尺度を用いる場合はその図形の近くに表記します。
2-3. 線や円
図面に用いる線や円は、線の形や太さにより種類がいくつかあります。それぞれを組み合わせて使用されます。
線の形による種類は「実線」「破線」「一点鎖線」「二点鎖線」の4種類あります。
線の太さによる種類は、線の太さの比率で「細線」「太線」「極太線」の区別があり、その比率はおよそ「1:2:4」と定められています。
太さの基準は「0.13、0.18、0.25、0.35、0.5、0.7、1、1.4、2mm」の9通りがあり、
例えば、細線の0.25mmを使う場合は太線を0.25mm×2=0.5mm、極太線は0.25mm×4=1mmを使用します。
線の用途による種類は、線種や太さなどの組合せによってさまざまあります。
2-4. 投影法と三角法
建築や土木と機械図面は、基本的に表現方法が異なります。建築や土木は2次元、機械図面は2次元平面上に3次元(立体)で表現します。
2次元平面上に3次元オブジェクトを表現する時に使用される図法を「投影法」といいます。
上図の視点0から透明なガラス板を通して図形の面ABCを見た場合、視点とガラス板に交点ができます。
この交点を結ぶとガラス板に図形abcを描くことができます。
このガラス板に図形を描く平面を投影面、視線に投影線といいます。
一般に用いられる図法として「正投影」があり、図形の1つの面を投影面に平行に置いた場合といいます。
1つの投影面だけでは不完全ですが、いくつかの投影面を描いて組み合わせると、図形を平面上に正確に図示できます。
機械図面でよく用いられる図法は「第三角法」で、対象物を手前に設け(傾け)対象物の形が分かるように配置し投影する方法の一つで、
基本は正面・平面・側面の三面図で構成されます。
【参考記事】
・建築CADとは?|図面種類・ソフト・資格・求人事情を簡単解説
・土木CADとは?|図面種類・ソフト・資格・求人事情を簡単解説
・電気CADとは?|図面種類・ソフト・資格・求人事情を簡単解説
・【アパレル業界】パタンナー、グレーダー、マーカーを目指す方におすすめCADを解説
・建築と土木の違いがわからない|学科や業界の違いからおすすめ資格まで簡単解説
3. 棚の設計図を描いてみよう(手書き)
図面を正確に作成したり読んだりするため、図面の基本を身に付けることが大事です。
設計図を作成することで、失敗のない作品を完成することができます。
設計図って何から始めればよいのか分からないですよね!?まずは、イメージを完成させましょう! 直感的に感じたデザインを手書きでざっくりと描いてみましょう。
3-1. デッサンを描く(スケッチ)
では、はじめに手書きで簡単に描いてみましょう。
今回は約30°の傾きをつけてみましょう。
①手前に見えている面を描き、次に約30°に傾けた奥行を追加していきます。
②イメージデッサンが完成したら、実際の寸法(高さ・横幅・奥行などのサイズ)や色・素材・材料を決定し図面に書き込みます。
③この図面のことを全体図といいます。全体図の完成によりイメージから、より完成品に近づきます。
全体図のデッサンが完成したら、これをもとに図面(全体図・部品図)を作成します。
3-2. 図面を描く
完成したデッサン(スケッチ)をもとに製図していきましょう。
今回は、A4用紙(縦置き)に三角スケールなどの製図用具を使って描いていきましょう。
①まず、図面枠を作成します。
図面をファイルに閉じることを考えて、左側により広めの余白を作ります。用紙枠より上下右は10㎜、左20mm内側に太めに線を描きます。
②次に表題欄を作成します。
表題欄とは図面の情報を記載する欄で、一般に「図面名」「作成会社名および作成者名」「縮尺」「作成日」などの情報を表記します。
右下に高さ20mm横70㎜の枠を太めの線、行間線は5㎜の細線で描きます。
※図面枠のサイズやデザインは各企業によって異なります。
※線の引き方はこちらをクリック→▼三角定規の使い方
③これで製図用紙の準備はできましたので、図形を平面に描きていきます。縮尺は1:10ですので、三角スケールの「1/100」を使用します。
図形は見えている部分は、太線の実線です。
※三角スケールの使い方はこちらをクリック→▼三角スケールの使い方
④続けて、30°に傾けた奥行を描きます。
下書き線として30°の線を薄く長く引きます。下書き線上に再度三角スケールで測った奥行の線を引きます、こちらも太線の実線です。
⑤不要な下書き線を消します。
※消し板の使い方こちらをクリック→▼消し板の使い方
⑥釘等の取り付け位置を描きます。
※円の描き方はこちらをクリック→▼円の描き方
⑦板厚などの部材寸法と通り芯を基準とした寸法線の2通りを描いてみましょう。寸法は細線の実線です。
寸法線は図形の直角水平に描きます。寸法値は一般に寸法線上の中央位置に描きますが、見づらい場合は分かりやすい位置に引き出すことができます。
⑧全体図が完成したら、次は部品図を描きましょう。部品(板)ごとに平面図で表します。
同じ部品がある場合は、代表で1つ描けばOKです。今回は縦板・横板・背面板(裏板)を一枚ずつ描きましょう。
※テンプレートの使い方はこちらをクリック→▼テンプレートの使い方
⑨全体図と部品図が描きあがりました。再度寸法の差異などないかをチェックしましょう。
修正箇所がなければ、図面の完成です!
三角スケールの使い方
三角スケールは「サンスケ」と呼ばれ、細長く断面形状が三角形をした定規で、それぞれの角の両面の辺に2種類ずつ計6種類の縮尺の目盛りが付いています。
一般的には1/100、1/200、1/300,1/400、1/500、1/600の縮尺に対応しています。単位は㎜(ミリメートル)です。
三角スケールを使うことで、尺度変換の計算の必要なく寸法を読みことができ便利です。
たとえば、1:20(ニジュウイチといいます)で、実寸で1500mmの線を図面上に描く場合、普通の定規では線を引く前に計算をする必要があります。
1500mmを20で割って75mmという縮尺後の数値を計算しなければなりません。
三角スケールを使用した場合は、1:20の縮尺率の目盛で「1.5」の位置をみればよいのです。
この三角スケールは寸法や縮尺を確認するための道具ですので、定規のように線を引くことは避け、 線を引くための位置を図りマークし定規などで線を引きましょう。
【参考記事】
・三角スケールの使い方を覚えよう!図枠の見方と各縮尺ごとの測り方
三角定規の使い方
三角定規は2種類の三角形の定規が1セットで販売されています。
この2つを合わせて使用すると、水平・水平平行線と垂直・垂直平行線が簡単に引くことができます。
【水平・水平平行線の描き方】
下側の三角定規を手でしっかりと固定し、上側の三角定規で左から右へ水平線を引きます。
上側の三角定規を上下にスライドすれば、水平平行線が描けます。
【垂直・垂直平行線の描き方】
水平・水平平行線と同じ要領で、上側の三角定規で上から下に垂直線を引きます。
上側の三角定規を上下にスライドすれば、垂直平行線が描けます。
この三角定規の使い方では、水平線と垂直線が同時に引けることが分かっていただけたと思います。 はじめのうちは難しく感じるかもしれませんが、何度か描いているうちに慣れますので練習してみてください!
円の描き方
今回全体図には30°の角度がついていますので、円は正円で描きません。
では、どのように描くのか実際に描いてみます。
①はじめに、描く円の位置に中心線を描き、正円を描きます。
今回は、直径20㎜の円とします。
②円が内接する四角形を薄く細線を描きます。
③対角線に内接する4点を求めます。描いた四角形の対角線を描いたら、一旦内接する円を消しましょう。
④対角線上に向かい合う円弧は同じです。P1とP2を通る曲線を描き、同じ曲線をP3とP4に描きます。
続けてP2とP3、P4とP1にも円弧描きましょう(テンプレートを使用すると便利です)。
⑤あとは、余分な補助線を消せば完成です。
テンプレートの使い方
テンプレートで円や円弧を描く場合、円の中心にテンプレートのマークを合わせて描きます。
円を描く図面に薄く細線で中心線を描き、その中心線にテンプレートのマークを正確に合わせて、円など描きます。
テンプレートには、数字やアルファベットなど様々な種類がありますので使用頻度の高いものは用意しておくと便利です。
消し板の使い方
消し板は、製図の際に消したい線や文字のみを消すためのプレートです。
消したい部分の上に消し板の穴の部分を置いて押さえ、上から消しゴムで擦ることで消したくない部分を残したままで不要部分をけすことができます。
消し板の穴の形は様々あり、曲線や直線など消す範囲の大きさや形状に合わせて使い分けましょう。
4. まとめ
いかがでしたか?
基本さえ分れば、はじめての方でも簡単に図面を作成することができます。 本格的なDIYやハンドメイド作品作りに挑戦するなら、図面を描いてみてはいかがでしょうか?
もっと本格的に製図をしたい!仕事や資格取得したい!とお考えの方には、製図板を使用することをお勧めします。
製図板とは、製図を行うことに特化された製図台の一種で、ドラフターとも呼ばれています。
製図板上にT定規、勾配定規、縮尺定規、用紙がズレ防止のマグネットプレートなどがセットでついているものも多くあり、
一般的な製図板は、傾斜角度を調整できるので楽な姿勢で製図できます。
もっともっと本格的に図面を描きたい!という方には、CAD(キャド)による製図をおすすめします。
今回手書きでの製図方法を解説しましたが、実務ではCADによる製図が主流となっています。
CADとは、パソコンを用いて設計・作図を支援するソフトウェアのことです。手書きに比べて、格段に早くてきれいな図面を描くことができます。
CADは手描きと違い、準備するものがパソコンとCADソフトだけです(ソフトによってはネット環境も必要になります)。 CADソフトは、無料版が数多く存在しますので低コストで始められるのもメリット1つです。
「パソコン初心者なので無理」「操作が難しいそう」「お金がかかりそう」と思われた方には、 まず無料で学べるCADスクールで基本を学んでみることをおすすめします!
未経験者の方も製図の知識がない方も安心して通っていただけて、就職支援も行っているCADスクールがあります。
詳しくはこちら→ 無料の就職支援CADスクール「lulucad」
CADオペレーターは年齢問わず長く働けるので、手に職を付けて働きたい女性に人気の仕事です。 現在オリンピック需要で条件の良い求人も多く出ています。
DIYやハンドメイド作品をより完成度の高いものにするには図面が必要不可欠ですので、手書きでもCADでも一度図面を描いてみて下さい!